レオ動物病院

鳥取県米子市のレオ動物病院のブログです。 主に病気や予防の説明を書いていきます。

鳥取県の平均気温から算出すると、5月下旬から10月下旬が感染シーズン、

したがって予防期間の理論値は6月下旬から11月下旬ということになります。

ただし、気温が上がる時期が異常に早い年がぽつぽつあります。これに対応するため当院では安全域を設けて6月上旬から12月上旬を予防期間としてきました。

 

ところが・・・

温暖化の影響か、昨今は気温が上がる時期がどんどん早まっている様に思います。

今年(2023年)は3月に桜が開花するなど、具体的に影響も出ている様子です。

 

※ちなみに桜の開花予想方法に「桜の開花600度の法則」というのがあるそうです。

(2月1日から日の最高気温を足していき、600度に達した時が開花予定日)

HDUの概念と似ていますね!

 

県内の気象観測地点の気温で鳥取県のHDUは算出されますが、それが鳥取県西部地区全域に当てはまるのか、少し不安を感じるようになりました。

最近はニュースで見るその日の気温と、実際に外で測定した温度がかけ離れている日も多々あります。それは実際のHDUに影響し始めていると思われます。

 

このため、2023年は

5月中旬から12月中旬までの予防期間とさせて頂きました。

 

確実な予防のために前年より予防期間を伸ばしましたが、地域によってはもともと気温が低めで(標高の高いところなど)あまり影響が出ていないと予測できるところもあります。

今後の気温変化や、学会で発表されるフィラリア感染率の変化により、また変更することがあるかもしれません。

フィラリアの予防方法についてもう少し詳しく書きます。

 

実は・・・

 

フィラリアの薬は「予防薬」ではなく「駆除薬」なのです!

 

〇フィラリア薬は、犬の体内に入って約1か月以内の幼虫にしか効かない。

 それ以上成長した幼虫を駆除することはできない成虫も駆除はできない。

〇フィラリアの薬が効いているのは1日だけ。

ミクロフィラリアは駆除してしまう。

 

飲ませたら今後の感染を防いでくれるのではなく、

飲ませた日からさかのぼって1か月以内に感染したフィラリアの幼虫を駆除してくれる。

これを毎月繰り返すことによってフィラリアの幼虫が心臓に到達するのを防いでいるのです!

したがって、フィラリアの予防期間は、

感染シーズンが始まってから1か月後から開始

感染シーズンが終わってから1か月後に終了

となります。


 では、感染シーズンとは何か。

「感染シーズン=蚊の体内でフィラリアの幼虫が感染力を持っている期間」

フィラリアの幼虫が感染力を持っている期間には気温が大きく関わってきており、

その算出方法にHDUHeartworm Development Unit」という考えかたがあります。

 

1日HDU=(1日の最高気温+最低気温)÷2-14

※マイナスの場合は0とする。

〇1日HDUを足していって、130を超えた日=感染シーズン開始

〇直近30日の合計HDUが130を切った日=感染シーズン終了

フィラリア感染シーズン

 

ちょっと複雑ですが、要するに暖かい日がしばらく続けば開始、寒い日がしばらく続けば終了というわけですね。

ということで、感染シーズンは地域によって違い、沖縄では長く、北海道では短い、ということになります。

 

フィラリアとは・・・・

犬の心臓に寄生する、ソウメン状の寄生虫のことです。(学名:Dirofilaria immitis)

感染経路は、ご存知の方も多いと思いますが、「蚊」です。

 

〇蚊がすでに感染している犬を吸血した時に、フィラリアの幼虫を体内に取り込む。

蚊の体内で幼虫が成長する。

蚊が別の犬を吸血した時に、成長した幼虫が犬の体内に侵入する。

犬の体内に侵入した幼虫は、さらに成長を続けながら移動し、約半年後に犬の心臓に達する。

犬の心臓の内部で生殖を行い、幼虫を産む。

血中に流れたその幼虫を、別の蚊が吸血の時に取り込む。→ほかの犬へ
フィラリアの説明

 

こんなサイクルで感染が成立しています。手書きの絵でスイマセン。

 

病気の症状は、主に心臓に寄生している成虫によって起こります。

心臓の中は小さな部屋に分かれており、精密な弁によって血液の流れを制御しています。ちょうど、ポンプみたいな構造ですね。

その中に細いとはいえ、ひも状の虫が寄生していたら・・・

まず、虫がぶつかる刺激によって心臓の内壁が痛みます。また、虫の分泌物や排泄物によって心臓や血管の変性が起こります。心臓の中の弁に虫が悪さをすることもあります。

その結果、心臓はポンプとしての働きを十分にこなすことが出来なくなり、体の中に「うっ血」と呼ばれる血液の流れが滞った状態が起きます。

そうすると、腹水が溜まったり、肥大した心臓が気道を圧迫することによる発咳・呼吸困難を起こしたり、また、突然心停止の原因にもなるとも言われています。

結構怖い病気なんですね。

もうひとつ厄介なのは、一度感染すると駆除が非常に難しい、ということです。

駆除する薬はありますが、副作用のリスクが高いのです。
また、駆除に成功しても心臓や肺への後遺症はずっと残ります。

 

ですから、この病気は

 

「予防をしっかりして、とにかく感染させない。」

 

これがすごく大事です!

 

鳥取県の平均気温から換算すると、6月から12月までの7ヵ月間、月に1回予防薬を飲ませれば予防できます。

※温暖化の影響か、非常に暑い年はこの限りではなくなってきました。今後、予防開始が前倒しになる可能性もあります。

すでにフィラリアに感染している状態で予防薬を飲んでしまうと、副作用が強く出る事がありますので、当院では毎年予防シーズンの前に血液検査を行います。

 

薬の種類はチュアブルと錠剤です。飲ませやすいほうをご指定ください。

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