ワクチンの説明の前に 簡単な免疫の話-その1
ワクチンについて説明していきますが、簡単な免疫の知識が必要なので、その話をします。
免疫とは、「免(免れる)疫(病気)」、病気から免れる体の仕組みのことを言います。
もう少し詳しく書くと、体が、自分以外の物体(病原菌・その他)を排除しようとする働きの事です。アレルギーなどにもこの働きが関わっています。
大きく分けると
〇細胞性免疫 好中球やマクロファージが病原体や異物を食べる作用
〇液性免疫 免疫細胞が作った抗体による作用
の2つに分かれます。
ワクチンに大きくかかわるのは液性免疫なので、ここに絞って話していきます。
抗体とは、B細胞が作るタンパク質でできている槍みたいなものです。以下の作用を持ちます。
〇中和作用 細菌や毒素を取り囲んで中和(無力化)する
〇オプソニン化作用 病原体や異物に取り付いて食べやすくする。
〇補体系活性化作用 血液中の補体を活性化させ細菌を破壊する。
病気Aに感染すると、その病原体Aに対応したA抗体が作られます。病原体Aへの攻撃が終わった後も、病原体Aの情報とA抗体の作り方は免疫細胞によって記憶されるので、次に同じ病原体Aが侵入した時に短期間で抗体が作られるようになります。
この状態のことを「病原体Aに対し免疫を獲得した」と言います。
狂犬病について
狂犬病ウイルス(rabies
virus:ラブドウイルス科リッサウイルス属)を病原体とするウイルス性の人獣共通感染症で、毎年世界中で約5万人の死者を出してる恐ろしい病気です。感染対象は、ヒトを含めたすべての哺乳類です。狂犬病のウイルスを持っている動物に咬まれ、発症した場合の致死率は、ほぼ100パーセントです。また、狂犬病は決して稀な病気ではありません。イギリスやオーストラリア等の例外を除けば、世界中に蔓延しているといってもいいでしょう。
日本で犬を飼われている方は、飼い犬に年に1回狂犬病ワクチンの接種を受けさせる事と、役所に飼い犬の登録をする義務があります。これは狂犬病予防法という法律によって厳格に定められているもので、違反すると罰金等の罰則も科せられる場合があります。
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=79028000&dataType=0&pageNo=1
また、もし飼い犬が誰か他人を咬んでしまった場合、高い確率で「狂犬病の注射打ってる?」という話になってきます。もし打ってなかったら、「飼い犬が狂犬病でない」という証明が必要になりますし、法律上非常に不利な立場になる可能性があります。
ご存知の方も多いと思いますが、幸い日本では1956年以降、犬の狂犬病の発生は報告されておりません。これは日本の厳重な検疫や過去の獣医師の努力、飼い主の皆さんの高い意識によって、成し遂げられた事なのです。世界中に蔓延している中で、力技で清浄な空間を作り上げているといってもいいでしょう。しかし、今まで通りの継続した努力がなされなくなったら、日本は容易に狂犬病発生国に転落してしまうでしょう。
「日本に狂犬病ないから~」と手放しで喜べる状態では決してないことをご理解ください。
自分は代診時代に、
○北海道の港に寄港したロシア船の船員からシベリアンハスキー直接買って、東京まで飛行機で運んできた。
○大陸(中国・朝鮮半島)から来た貨物船の係留ロープを伝って船内のネズミが日本に上陸している。(狂犬病は、ネズミも含めた全ての哺乳類に感染します。)
なんていう噂話を聞いたことがあります。正規の検疫を受けていない動物が日本に上陸する可能性はゼロではないでしょうね。
狂犬病に関するエピソードをひとつ。
以前、中国で狂犬病が流行した時、中国当局がとった解決策・・・・それは、
「軍のトラックが町中を周り、野良犬、飼い犬の区別なく、全ての犬を捕獲・没収し、全ての犬を殺処分」
でした。飼い犬の中には狂犬病のワクチンを接種している子もいたと思いますが、そういうのも関係なしに没収されたとの事です。ややヒステリックな対応の様にも感じますが、中国当局からしたら当然の対応だったのでしょう。狂犬病の流行を早く収束させないと、人間の被害が増えてしまいますから。それだけ怖い病気なのです。
(繰り返しますが、発症した場合の致死率は100パーセントです。)
もし、狂犬病が日本に入ってきても、狂犬病の予防接種を受けている犬が大多数なら、大流行は防げるはずです。
狂犬病の予防注射は必ず打ってくださいね!



