レオ動物病院

鳥取県米子市のレオ動物病院のブログです。 主に病気や予防の説明を書いていきます。

2023年07月

狂犬病ウイルス(rabies virus:ラブドウイルス科リッサウイルス属)を病原体とするウイルス性の人獣共通感染症で、毎年世界中で約5万人の死者を出してる恐ろしい病気です。感染対象は、ヒトを含めたすべての哺乳類です。狂犬病のウイルスを持っている動物に咬まれ、発症した場合の致死率は、ほぼ100パーセントです。また、狂犬病は決して稀な病気ではありません。イギリスやオーストラリア等の例外を除けば、世界中に蔓延しているといってもいいでしょう。

日本で犬を飼われている方は、飼い犬に年に1回狂犬病ワクチンの接種を受けさせる事と、役所に飼い犬の登録をする義務があります。これは狂犬病予防法という法律によって厳格に定められているもので、違反すると罰金等の罰則も科せられる場合があります。

https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=79028000&dataType=0&pageNo=1

 

また、もし飼い犬が誰か他人を咬んでしまった場合、高い確率で「狂犬病の注射打ってる?」という話になってきます。もし打ってなかったら、「飼い犬が狂犬病でない」という証明が必要になりますし、法律上非常に不利な立場になる可能性があります。

 

 

ご存知の方も多いと思いますが、幸い日本では1956年以降、犬の狂犬病の発生は報告されておりません。これは日本の厳重な検疫や過去の獣医師の努力、飼い主の皆さんの高い意識によって、成し遂げられた事なのです。世界中に蔓延している中で、力技で清浄な空間を作り上げているといってもいいでしょう。しかし、今まで通りの継続した努力がなされなくなったら、日本は容易に狂犬病発生国に転落してしまうでしょう。

 

「日本に狂犬病ないから~」と手放しで喜べる状態では決してないことをご理解ください。

 

自分は代診時代に、

○北海道の港に寄港したロシア船の船員からシベリアンハスキー直接買って、東京まで飛行機で運んできた。

○大陸(中国・朝鮮半島)から来た貨物船の係留ロープを伝って船内のネズミが日本に上陸している。(狂犬病は、ネズミも含めた全ての哺乳類に感染します。)

 

なんていう噂話を聞いたことがあります。正規の検疫を受けていない動物が日本に上陸する可能性はゼロではないでしょうね。

 

狂犬病に関するエピソードをひとつ。

以前、中国で狂犬病が流行した時、中国当局がとった解決策・・・・それは、

 

「軍のトラックが町中を周り、野良犬、飼い犬の区別なく、全ての犬を捕獲・没収し、全ての犬を殺処分」

 

でした。飼い犬の中には狂犬病のワクチンを接種している子もいたと思いますが、そういうのも関係なしに没収されたとの事です。ややヒステリックな対応の様にも感じますが、中国当局からしたら当然の対応だったのでしょう。狂犬病の流行を早く収束させないと、人間の被害が増えてしまいますから。それだけ怖い病気なのです。

(繰り返しますが、発症した場合の致死率は100パーセントです)


もし、狂犬病が日本に入ってきても、狂犬病の予防接種を受けている犬が大多数なら、大流行は防げるはずです。

 


狂犬病の予防注射は必ず打ってくださいね!

その2では、実際のSFTSの特徴をまとめていきます。



SFTSの特徴
マダニの咬傷感染した動物の体液・排泄物から感染する

▷SFTSウイルスを保有するマダニに人が直接咬まれて感染するルート

 ▷ SFTSウイルスに感染した動物の体液・排泄物との接触で感染するルート

 SFTSイルスに感染した人の体液・排泄物との接触で感染するルート
があります。

 〇診断が難しい 

現時点では、検体を検査機関に送り、遺伝子検査までしないと確定診断ができません。また発症時は急激に一般症状が悪化するようですが、発症初期の症状が、風邪や胃腸炎と被っています。

人での症状:発熱 下痢嘔吐 意識障害 皮下出血 等です。

 〇ワクチンが人用、動物用、ともに発売されていない。

研究はされている様です。

〇特効的な治療方法は確立されていない

人の医療では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に使われた抗ウイルス薬が有効だったという情報がありますが、それでもまだ致死率は高い模様です。

https://www.niid.go.jp/niid/ja/basic-science/virology/10200-vir-2021-03.html

 〇人での死亡率は高く、2030と言われている。

ここ数年大きな変化は無いです。特に高齢の方の致死率が高い模様です。

 〇西日本を中心に発生数が増えてきている

発生件数の増加、発生地域の拡大が認められます。

 

SFTSの症状 

〇猫がSFTSを発症した場合の症状は、衰弱・脱水・発熱・黄疸 等と言われています。

猫での病原性は高いため、経過は早く致死率も約60%と高いです。

発症中は唾液、便、尿にウイルスを排出します。対症療法に反応した場合回復することもあります。一度回復した猫は抗体を持っているので再発はしないはず、との事。

※猫で発症後2週間後にはウイルスの排出が無くなったとの報告あり

外で生活しており、マダニにかまれる可能性がある猫に上記の症状が出ていた場合、警戒した方がよいかもしれません。

 〇犬での症状は同様に衰弱・脱水・発熱・黄疸 等です。

猫と違い、不顕性感染(症状が出ない感染)が多い可能性があるとの事。

発症した場合の致死率は約40%程度と猫よりは少し低い程度です。

 




その他

SFTSウイルスに有効な消毒

次亜塩素酸 ビルコン ポピドンヨード アルコール 等の消毒薬

または熱水消毒 80℃ 10分 ※熱湯なら確実

 

〇看護時に人の医療機関で推奨されている防護具

ゴーグル・フェイスシールド

エプロン、2重のゴム手袋、マスク

※エアロゾル感染の危険性が指摘されています。

SFTSウイルスの遺伝子を調べた研究によると、中国由来のウイルスもあれば、日本国内で進化していった形跡のあるウイルスもあるとの事です。

昔から日本国内に存在していたが、ほかの病気と間違えられたり、原因不明の病気として片付けられたりして表在化していなかっただけかもしれません。

 


以上、厚生労働省、国立感染症研修所の
HPを参考に作成しました。

マダニから感染した病気で人が亡くなるというニュースは昔から時々聞いていましたが、最近はその原因としてSFTSという名前を聞く機会が増えてきました。
SFTS(
重症熱性血小板減少症候群)2011年に中国で発見された、比較的新しいウイルスによる病気です。日本国内では2013年から西日本を中心に発生が報告され、年々報告数が増えてきております。マダニが媒介すると言われていますが、マダニから動物、動物から動物、動物から人、人から人へ感染する可能性もあります。

SFTS発症動物を看護中に動物医療関係者が感染した例も報告されています。

2020年から鳥取県内で人での発生例が、2021年春には犬での発生例(米子市)が報告されました。
以後も毎年県内で発生の報告が上がっています。

 
私がこの病気の怖いと思う点を3つ挙げます。

〇致死率が高い。
犬での致死率が40%、猫での致死率が60%と言われています。
また、人が感染した場合の致死率は20~30%です。国内で認められる人の感染症のなかでこれほど致死率の高いものは稀です。

 飼っている動物がSFTSウイルスを人間の生活圏内に持ち込んでしまう可能性がある。

人間がマダニに咬まれることはまれですが、地表を歩く犬・猫はマダニに咬まれる可能性は人よりは高いはずです。もし飼っている動物がSFTSに感染した場合、動物の唾液・便・尿を介して人間がSFTSに感染する可能性も出てきます。

確定診断がつくまでに、周りにSFTSウイルスを拡げてしまう可能性がある。
潜伏期間(6~14日)があるのと、症状が特徴的でないため、確定診断が遅れる可能性があります。

ノミダニ図1

これからのノミダニ予防は、動物の健康のためだけでなく

人の健康を守るため、ひいては公衆衛生上重要になってくると思われます。

外を散歩する機会がある犬、家の外に出る機会がある猫を飼われている場合、
〇ダニの活動シーズン中(3月~12月)の確実な予防。

〇草むらに近づけない入らない。
(特に草むらにマダニが増える春と秋)

〇散歩後、頭部・顔面を中心にマダニがついていないかチェック。(動物は頭から草むらに突っ込むため)

当院はこの3つを強く推奨します!

 




予防に関してですが、フロントライン、ブロードライン、ネクスガードを使っていれば、動物に
マダニが全く寄り付かなくなるわけではありません。しかしこれらの予防薬は、適切に使用すればマダニが喰いついてからSFTSウイルスが動物に侵入するまでの間にマダニを駆除できる可能性が高く、SFTS感染の可能性を大きく減らすことができるはずです。

ただし、定期的に予防薬を使用している動物でもSFTSが発症した例は認められています。
予防薬だけで100%防げるものではなく、マダニと接触する機会を減らす事もとても重要です。



 
また、飼い主の方々も、野山や草むらに入られる際は、長袖、長ズボン手袋等で防護し、素肌をさらさない様ご注意ください。

マダニは皮膚に喰いついた際、痛みの感覚を麻痺させる物質を分泌するらしく、喰いつかれている事になかなか気づけなかったいう話も聞きます。

野山から帰られた際は、鏡等を使って背中や二の腕、太ももの裏側までチェックされると安心かもしれません。

マダニが喰いついてるのが確認出来た場合、ダニには触らず人の皮膚科を受診してください。無理に取るとダニの頭部や顎が皮下に残って炎症や感染を起こしますし、潰すと、SFTSウイルスも含めた病原菌が周囲にまき散らされる可能性があります。
また、野生動物(タヌキ、キツネ、イノシシ、シカ等)との接触や、野生動物の痕跡(糞など)に近づく事も避けましょう。

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↑画像クリックで国立感染症研究所作成のPDFに飛びます。とても分かりやすい!

その2に続く


 


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