マダニから感染した病気で人が亡くなるというニュースは昔から時々聞いていましたが、最近はその原因としてSFTSという名前を聞く機会が増えてきました。
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)は2011年に中国で発見された、比較的新しいウイルスによる病気です。日本国内では2013年から西日本を中心に発生が報告され、年々報告数が増えてきております。マダニが媒介すると言われていますが、マダニから動物、動物から動物、動物から人、人から人へ感染する可能性もあります。
SFTS発症動物を看護中に動物医療関係者が感染した例も報告されています。
2020年から鳥取県内で人での発生例が、2021年春には犬での発生例(米子市)が報告されました。
以後も毎年県内で発生の報告が上がっています。
〇致死率が高い。
犬での致死率が40%、猫での致死率が60%と言われています。また、人が感染した場合の致死率は20~30%です。国内で認められる人の感染症のなかでこれほど致死率の高いものは稀です。
人間がマダニに咬まれることはまれですが、地表を歩く犬・猫はマダニに咬まれる可能性は人よりは高いはずです。もし飼っている動物がSFTSに感染した場合、動物の唾液・便・尿を介して人間がSFTSに感染する可能性も出てきます。
〇確定診断がつくまでに、周りにSFTSウイルスを拡げてしまう可能性がある。
潜伏期間(6~14日)があるのと、症状が特徴的でないため、確定診断が遅れる可能性があります。
これからのノミダニ予防は、動物の健康のためだけでなく
人の健康を守るため、ひいては公衆衛生上重要になってくると思われます。
外を散歩する機会がある犬、家の外に出る機会がある猫を飼われている場合、
〇ダニの活動シーズン中(3月~12月)の確実な予防。
〇草むらに近づけない入らない。
(特に草むらにマダニが増える春と秋)
〇散歩後、頭部・顔面を中心にマダニがついていないかチェック。(動物は頭から草むらに突っ込むため)
当院はこの3つを強く推奨します!
予防に関してですが、フロントライン、ブロードライン、ネクスガードを使っていれば、動物にマダニが全く寄り付かなくなるわけではありません。しかしこれらの予防薬は、適切に使用すればマダニが喰いついてからSFTSウイルスが動物に侵入するまでの間にマダニを駆除できる可能性が高く、SFTS感染の可能性を大きく減らすことができるはずです。
ただし、定期的に予防薬を使用している動物でもSFTSが発症した例は認められています。
予防薬だけで100%防げるものではなく、マダニと接触する機会を減らす事もとても重要です。
マダニは皮膚に喰いついた際、痛みの感覚を麻痺させる物質を分泌するらしく、喰いつかれている事になかなか気づけなかったいう話も聞きます。
野山から帰られた際は、鏡等を使って背中や二の腕、太ももの裏側までチェックされると安心かもしれません。
マダニが喰いついてるのが確認出来た場合、ダニには触らず人の皮膚科を受診してください。無理に取るとダニの頭部や顎が皮下に残って炎症や感染を起こしますし、潰すと、SFTSウイルスも含めた病原菌が周囲にまき散らされる可能性があります。
また、野生動物(タヌキ、キツネ、イノシシ、シカ等)との接触や、野生動物の痕跡(糞など)に近づく事も避けましょう。
↑画像クリックで国立感染症研究所作成のPDFに飛びます。とても分かりやすい!
その2に続く